新型コロナウイルスが蔓延する前からニュースなどで「インバウンド需要」という言葉を耳にする機会が増えていました。
そもそもインバウンド需要とはどのようなものを指しているのでしょうか。
この記事ではインバウンド需要や、コロナ終息後のインバウンド需要の予想、インバウンド対策の課題や、恩恵を受ける業界について解説します。
インバウンドビジネスに携わりたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
インバウンド需要とは、日本における外国人観光客の旅行需要のことをいいます。
インバウンド(inbound)は、「入ってくる」「内側に向かう」という意味の英語で、業界によって意味が異なることもありますが、日本の旅行業界を中心に「日本を訪れる観光客」という意味で使われています。
インバウンド需要は日本を訪れる外国人観光客によって生み出されるもので、商品からサービスまでさまざまです。
一時期話題となった外国人観光客による爆買いも、インバウンド需要の一つです。
インバウンド需要は国内消費ですが、GDPでは輸出のカテゴリーになります。
不況が続き、少子高齢化社会になっている日本では、国内消費が減少している傾向にあります。
そこで外国人観光客のインバウンド需要を満たすことで消費行動を促し、経済を活性化させようとの考えからインバウンド対策に取り組む企業が増えたのです。
2015年には外国人旅行者数が前年からの伸び率が47.1%を記録し、日本を訪れる外国人観光客の数は年々大幅な上昇傾向にありました。[注1]
2018年には訪日外国人観光客数が3000万人を突破・政府は東京オリンピックが予定されていた2020年までに、4000万人を達成することを目標としていたのですが、新型コロナウイルスの影響で、2020年3月には3月が前年同月比で外国人観光客数が93%も減少し、以降厳しい状況に陥っています。
[注1]観光庁|【訪日外国人消費動向調査】 平成27年(2015年)年間値(速報) および平成27年10-12月期の調査結果
世界的にも大きな問題となっている新型コロナウイルスの蔓延により、日本のインバウンド需要も大幅に減少しました。
しかし、どの国でも少しずつ行動範囲を広げてレジャーを楽しむ人が増えており、日本でも少しずつ入国規制緩和が進んでいます。
すぐに急速な回復が期待できるとは言えませんが、今後少しずつコロナ禍前の状況に戻ってくることが考えられるでしょう。
今後世界各国の人が行動範囲を広げてレジャーを楽しむようになれば、日本のインバウンド需要は再び大きく上昇することが考えられます。
今のうちからインバウンドに向けた対応を準備しておくことは、コロナ終息後にインバウンド消費を高め、日本の経済を発展させるために重要だと言えるでしょう。
インバウンド需要に対応するために、国をあげてさまざまな対策を行っていますが、まだまだ課題は山積みです。
コロナ終息後のインバウンド需要に柔軟に対応するためには、今後どのような課題の解決が求められるのでしょうか。
最も大きな課題となっているのは、言語の壁です。
日本国内でも他言語に対応する取り組みをしている施設や公共交通機関、企業、飲食店やホテルなどは増えてきていますが、外国人が安心して旅行を楽しめるほど対応できているとは言えないでしょう。
特に個人の飲食店や小売店などは、外国語に対応していないところも多く、外国人が気軽に立ち寄るにはハードルが高いです。
また、他言語表示をしている場所でも、そこにいるスタッフが外国語に対応できないという課題もあります。
言葉が通じないことで思うようなサービスが得られなかったり、せっかくの観光地で満足できなかったりしては「また日本に来たい」と思ってもらうことができません。
土地勘のない海外旅行だからこそ、言葉が通じないことには大きな不安になっています。
日本は少子高齢化社会で15〜64歳の生産年齢の人口が減少傾向にあります。
そもそも人材不足が問題となっているうえに、優秀な人材が海外に流出していることもあり、国内で優秀な人材を確保するのは難しくなりつつあると言えるでしょう。
待遇改善や積極的な外国人雇用採用によって優秀な人材を確保することは、インバウンド対策のために欠かせません。
また、長期的な視野で優秀な人材を育てるという視野を持つことも必要になってくるでしょう。
文化や食事の内容は国によって大きく異なります。
日本の文化や世界的に人気な日本食を求めて訪れる外国人観光客は多いです。
言葉の壁に通じる課題ではありますが、日本の文化やマナーを学ぼうという姿勢を外国人が持っていても、迎える日本人がきちんと説明ができなければ、残念な思いをさせてしまうこともあります。
また、宗教上の理由や個人の嗜好で食べられない食材がある外国人の方でも、日本食が楽しめるような工夫も必要になるでしょう。
近年は日本でもキャッシュレス決済が広がりつつあります。
ただ、小売店などではキャッシュレス決済に対応していないところもありますし、対応していても日本国内向けのキャッシュレス決済のみの対応というところも多いです。
海外ではキャッシュレス決済が一般的ですし、母国とは通貨の異なる日本で大金を現金で持ち歩くのは不安に感じてしまうでしょう。
ストレスなくスムーズに決済ができる環境づくりをしていくことも、インバウンド対策の課題です。
外国人観光客が日本に滞在する際、積極的に利用するのが無料のWi-Fiです。
日本でも都市部や公共交通機関を中心に無料Wi-Fiを利用できるところは増えていますが、海外ほどはWi-Fi環境が整っているとは言えません。
施設やお店などでパスワードが必要なWi-Fiを用意している場合でも、接続しやすいような環境作りは必須と言えるでしょう。
インバウンド需要が高まることで、特に恩恵を受ける業界を紹介します。
インバウンド最前線で日本を世界にアピールする仕事に就きたいと思っている方は必見です。
日本の商品は低価格でクオリティが高いと世界的に知られており、外国人旅行客は日本の商品を好んで購入する傾向にあります。
そのため、ドラッグストアやスーパー、アパレルや家電量販店などの小売業界はインバウンドの恩恵を受けやすい業界です。
深夜でも気軽に立ち寄れるコンビニは外国人に人気があります。
また、観光地限定のお土産や日本の伝統工芸品なども、外国人の目には新鮮に映るものが多いです。
ホテルや旅館、民泊などの宿泊業界もインバウンド効果で恩恵を受ける業界です。
日本に旅行に来るということは必ず宿泊先が必要になります。
外国人はパッケージツアーを使わず自分で予約する人も多いので、外国語でも予約しやすい環境作りをしていると、さらに恩恵が受けやすくなるでしょう。
日本食は世界各国で人気の料理です。
日本に来たら、日本らしさを感じられるお店で食事をしたいと考えている外国人は多くいます。
そのため、飲食業界もインバウンド効果で恩恵を受ける業界です。
ベジタリアンやハラルの方にも対応するなど、食べられない食材がある外国人にも対応することで、さらに恩恵が受けられるでしょう。
インバウンド効果が高まると、Wi-Fiなどの通信設備や電子決済などのインフラ関連の企業も恩恵を受けます。
インバウンド対策として欠かせないものだからこそ、インバウンド需要の伸びと比例して、通信や電子決済のインフラ業界も恩恵を受けられるでしょう。
さまざまな観光地で外国人旅行者のおもてなしをする観光業界も、インバウンド効果の恩恵を受ける業界です。
通訳ガイドやコーディネーター、コンダクター、観光案内所のスタッフなど、インバウンドの最前線で外国人観光客が日本を楽しめるようにサポートします。
また、裏方で外国人観光客が楽しめるような環境作り・仕組み作りをすることも、観光業界の大切な仕事です。
コロナ終息を見据えてインバウンド業界で働こう
新型コロナウイルスの影響で大幅に減少したインバウンド需要ですが、旅行したい国として今も人気が高い日本は、コロナ終息後に再び人気の旅行先となることが期待されています。
人と関わることが好き・人と話すことが好きという方で、インバウンド業界に興味があるなら、観光業界で働いてみませんか。
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